REVOLVER ・ 『ディスタンス』コラボレートTシャツで登場の寺島さん。
  2001年7月3日・シネマライズ

7月3日 最終回上映終了後、シネマライズにおいて『ディスタンス』の第3回ティーチ・インが催されました。 おいでになれなかった方のために、このサイト上に採録します。





是枝 : ティーチ・インも3回目になりました。たくさんお集まりいただきましてありがとうございます。監督の是枝です。30分ほどの短い時間なので皆さんとのQ&Aを長くとって、この映画について感じたり考えたりすることをより膨らませてもらって、持って帰るお土産が増えると良いなと思います。

寺島 : 出演させていただいた寺島です。今日はようこそいらっしゃいました。おかげさまで『ディスタンス』はたくさんのお客様が来ていらっしゃるみたいで。これからも日本映画に日本のお客様が増えるようにがんばっていきたいと思いますので、みなさん応援してください。



女性1 : 寺島さんにおききしたいのですが、役柄でどんなところが難しかったですか?

寺島 : 難しかったところ・・・。そうですね。ある意味難しいと思うと難しくなっちゃうんで、難しく考えないようにいつもしてるんですけど。ただ1つだけ、どんな役をやっても、もし自分がこういう状況になればどうなるだろうとまず考えて、その人になった気になる。あとは是枝監督の演出を必死に聞いて、それに応えられるようにがんばっただけで、あえて難しいことはなかったです。

是枝 : 今回、寺島さんにやってもらった役は、いちばん僕自身の年齢に近く、こちら側で生きてる人の痛いところ、同世代の弱いところをいちばんさらけ出してもらっているという感じがしています。

寺島 : さらけ出すことがとても恥ずかしかったというか。難しいわけじゃないんですけれども、全部「裸」にされるような感覚があって、でも観ていただいたとおり、そんな感じです。答えになってねーな。(笑)

是枝 : 僕が今回一緒に仕事をできてよかったなと思うのは、寺島さん側から、この実という人間は嫁さんとこういう関係なんじゃないかとかアイディアが出てきたこと。ロッジの中2階に布団があったじゃないですか。それをめくるでしょ、あれがすごく好きなんです。あのシーンは台本にあるわけではなくて、美術の方がああいう状況なら布団があるんじゃないかと考えて置いてくれたんです。それを寺島さんが見つけて、気になると。とても気になると。男として気になると言ってたので、じゃあめくってみようと。人がいない時なら・・・あのキャラクターだとみんながいるところでは絶対に言わないし、やらないことだけど、一人の状況ならばこっそり見るんじゃないかと。現場で作ったシーンなんですけど、美術の方のアイディアがあって、役者さんの一言からシーンが始まっていくみたいなところが面白くできた気がしてるんです。一人の人間のキャラクターを作っていく上で。

寺島 : 好きな人は信じなくちゃいけないんですけど、気になれば気になるほど自分の癖で妄想狂になることがあって、いやらしい野郎だなと思ったんだけど。

是枝 : でもスタッフの中の30歳以上の男はみんな試写を観ながら「やるかもしれない」って言ってたよ。

寺島 : やるよ。絶対。(笑)

是枝 : そういう意味でリアルじゃないかなと思うんですよね。



男性1 : はじめの車の中で寺島さんと他の人たちがしゃべっているのが自然な感じでしたが、台本にはどう書いてあったんですか?

寺島 : 台本ですね。あるにはあるんですが。5人のキャストに関してはある程度、ベースラインの台本はあるんですけど、人間誰しも秘密ごとがあるもので、隠された過去の経緯とかがあると思うんで、5人の台本がそれぞれ違ったらしいんですね。自分のはベースのセリフがあるんですけど、4人のセリフはある程度アバウトなんです。その辺はうまく自然にできたかなと思っています。

是枝 : いいかげんな台本があってそれに乗って好きにしゃべってというような。1年ぶりに会った4人がいったいどういう会話をするか。最初やっぱり探り合いがあるじゃないですか、その辺をうまく引き出せればなと思って、それぞれに本人の部分の台本だけを渡して。寺島さんの台本には伊勢谷君が何を言うか書いてないんですよ、具体的には。そんな状況で自分の情報だけを持って車に乗って、よーいスタート!といった感じで基本的には撮ってるんですけど。

寺島 :
しゃべったもの勝ちとか、黙ったもの勝ちとかあったんですよ(笑)

是枝 : しゃべった方ですね。(寺島さんを指差す)

寺島 :
(笑)

是枝 :
ARATA君は黙った方ですね。任せるとキャラクターによって、しゃべろうとするキャラクターと、ARATA君なんかよくあれだけ黙ってられるなというぐらい、フリーでしゃべっていいよと言っても黙ってるんですよ。逆にそこで黙っていることで彼なりのリズムがあって。その辺が見ていて面白かったですね。



男性2 : 1人目の奥さんと2人目の奥さんが180度逆のタイプだったような気がしますが?

寺島 : これは監督がそういう状況をキャスティングしていて。まあ何て言うか、1回目うまくいかなかったんで。人間誰しもないものねだりみたいなものがあるじゃないですか、新しい物好きというか。白い世界が灰色になって、黒くしてみちゃえみたいな強引なキャラだったのかなと。今思うとそういう感じもするんですけど。どうなんでしょうか?

是枝 : 最初に寺島さんが、実というのはこういうキャラクターで、最初の奥さんはこうで再婚する奥さんはこんなタイプで、こういう名前でと、すごく綿密に細かく書き込んできたのね。僕の渡したアバウトなプロットに。1人目の奥さんの名前と2人目の名前と、生まれた子供の名前まで決めてきた(笑)。一応それを受け止めつつ、僕としては2度目の相手に関してまず重要なのは、前に起きた事件のことを知ってるのか知らないのか。実が2度目の奥さんに事件のことを話すか話さないか。というところから、役柄や年齢設定、どういうシュチュエーションで再婚したことにしようかというのを、映画の前面に出すかどうかは別にして作っていったんです。どのくらい伝わったのかはわからないんですけど。1人目の奥さんは設定としては高校の同級生で野球部のマネージャーという設定で。わからないですよね(笑)。でもそれはわかんなくてもいいと思いながら、ただ、やり取りの中で旦那さんのことを君を付けて呼ぶんですよ、その「甲斐君」と言うその「君」に思いを込めてるんですよ。結構、結婚しても昔同級生だったりすると旦那さんのことを君づけで呼んだりするじゃないですか。それがアイディアとして出てきて、その辺にこだわって「君」を残してるんですよ。2度目の奥さんはデキちゃった結婚(笑)というような、裏の設定を持ちつつ演じてもらっている感じです。

寺島 : 軌道修正させられましたから。

是枝 : 最初はね、寺島さんは願望があってね、2度目の奥さんにも全部事件のことを話して、それで結婚しているという。もうちょっと年齢の高い人で。僕の考えたものと逆の感じだったんです。受け止めてもらえている、じつはわかっている奥さんというのを願望として書いてこられたと思うんですけど、その辺りは僕が修正しました(笑)。
 
         
       

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