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怒ってます。

2015年6月4日

今日発売の週刊文春に『是枝監督がカンヌ、くまモンパーティーに怒った!』と題された記事が掲載されました。
記者の片岡さんという方から取材申し込みの連絡を事務所のスタッフが受け、いったんお断りしたのですが、僕のメールアドレスに直接、再度依頼が届きました。映画への公的助成を考える趣旨の内容だったので、次のようなメールを返信しました。以下全文です。

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片岡さま。
メールありがとうございました。
確かに、あのパーティには違和感を感じて参加はしておりません。
それは、映画が中心にあるべき映画祭という場所にふさわしくないと思ったからです。ただし、参加していないので実際どうだったのか?僕は語れません。
むしろ、参加した方々への取材をされたほうが良いのではないですか?
あと、映画祭という、本来的には私たちが映画という文化の為に何が出来るのか?を考える場所を、日本のコンテンツを売り込む、見本市と勘違いしたような、くまモンや、コップのふちこや、ロボットガールがどのような経緯で選ばれたのか?
責任者に取材をされて、その上でやはり僕に、ということであれば、この取材はお受けします。単純な、表面的な揶揄のようになってしまうのは避けたいので。
以上です。

是枝裕和

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僕としては、取材は再度お断りしたつもりでしたが、にもかかわらず、この返信メールの一部を引用して記事は書かれました。
もちろん引用されることは全く事前に連絡はありませんでした。
映画という文化への国の支援の方法について、きちんと取材を重ねられるのであれば、受ける、と伝えたにもかかわらず。です。パーティーに参加していない人間が、批判することは、主催者にとっては不愉快でしょうし、僕は、この件に関しては当事者でもあるので、底の浅い批判に終始し、単純な揶揄になりたくないと思い、自分としては誠意を持って返信したつもりでいましたが、どうも真意は受け止めてもらえなかったようです。
少なくとも紙媒体では、メールの一部をこのような形で引用したいと思うのだが?という連絡が事前にあってしかるべきだと思うのだけど、違うかな?最早、感覚はリツイートと同じなんでしょうか?
記者に、その旨メールしたところ、『「取材を申し込んだところ、こういう返事があった」としてその文面を紹介するのは、取材活動の一環だと考えて』いる、とメールの返信がありました。

記事は『もっと怒ったほうが良さそうです』とまとめられていますが、今、僕の中にある怒りと落胆は、パーティーに対するものではありません。

是枝裕和