スタッフ日記
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たかがパジャマ、されどパジャマ
2007年8月22日   文 : 砂田麻美
写真 : 飯塚美穂

この映画は、両親の家に里帰りした家族の、2日間の夏の物語だ。
だから、当然衣裳も2種類しか存在しない。
けれど撮影は2ヶ月続く訳で、ともなればキャストは毎日毎日、
泣こうがわめこうが同じ衣裳に身を包むことになる。
時折撮影所の様子を見に来てゆかり役の夏川結衣さんと昼食をとるスタッフは、
いつ来ても夏川さんの衣裳が変わらないので非常に奇妙だと述べていた。

そんな夏川さんの衣裳が変わった。
パジャマを着たのである。
たかがパジャマ、されどパジャマである。
そして、今日そのパジャマを着て、我々スタッフが通常「じわじわ」
と呼ぶシーンの撮影が行われた。

夏川結衣さん演じるゆかりと、阿部寛さん演じる夫の良多が、
ゆかりの連れ子であるあつしと3人で寝室に寝転び、話をするシーン。
派手なシーンでも、物語の核となるシーンでもない。
けれど撮影前から、このシーンが一番好きだというスタッフが少なからずいた。
私も好きなシーンのひとつだ。
この3人の会話の中に、「じわじわ」という言葉が登場する。
対人間について用いられる「じわじわ」とは何だろう?
人が他者との間に非常に強く、かつゆるぎない関係を築く上で不可欠な
感情的でも刹那的でもない、静かでゆるやかな時の流れの描写。そう私は考えている。
そして言うなればこの映画そのものが、観終わった後に「じわじわ」と
感情の波が押し寄せるような作品なのだと思う。
どんな風に「じわじわ」するかは、この映画を観た一人一人で
全く異なっているだろうことを想像すると
またそれも興味深い。


 

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